父が脳梗塞で倒れたことがきっかけで実家に戻ることになります。

元々、実家に戻るつもりで仕事を辞め引っ越しの準備も始めていました。

物事は、まるでそうなる事を見越していたかのように迅速に進みました。

田舎に帰り、真っ先にしなければならないのは仕事探し。

私は当然のように父の仕事を継ぐ気持ちでいました。

仕事は自営でいいとして、住む処は?

実は我が家には実家と呼べるところがありません。

昔々、本家の横に家を建てたのですが、そこは未完成のまま放置されました。

その後、父の仕事が軌道に乗り、事務所兼自宅みたいな感じで私達も引っ越しました。

私は高校生までその借家で暮らし、就職を機に出ることになりました。

数年後、父はその事務所と賃貸していたグリーンタイキ工場を引き払い、ついに山暮らしを始めます。

50a程の敷地に土砂を入れ、石垣を組み、川を作り、工場を建てました。

工場内には6畳と8畳の2部屋が設けられました。

ごく簡易的な台所はセメントの床です。

水道は通っていませんでしたので、雨水をろ過したものが生活用水です。

飲み水や調理水は近くの湧き水給水所から汲んできます。

お風呂は作りかけの完全露天。

温泉風の浴場と石組み露天風呂の2つという贅沢な造りです(笑)

が、お風呂沸かしは面倒でした。

軽トラに500Lタンクを積み、きれいな湧き水を汲んで沸かします。

ヒグラシの鳴き声を聴きながら水汲みしている時、「あぁサバイバルだ。」なんて笑いながら呟いていた事を思い出します。

灯油ボイラーだったのが救いでした。薪で沸かすのはすごく大変です。

満天の星空と夜に鳴く鳥達の声を聴きながらの入浴は、言葉では言い表せない不思議な感覚でした。

大阪での生活を思い出したり、これからの自分の人生を考えたり・・・。

一般的な人がこういう生活を送ることになったら、どう思うのでしょう?

私は何故か高揚感と満足感に満ち溢れ、幸せとすら感じていました。

家はない。仕事はない。笑うしかない。

ある程度の貯金はありましたが、仕事の展望は全く見えない。

節約をする為、3万円の「スズキ エブリィワゴン660ホワイト」を購入し営業を始めました。

人生初のクルマ購入です(笑)

外観に大きな傷はありませんでしたが、カーブを曲がると どこからか風が吹き、雨が降れば雫が落ちてきました。

CDは付いていませんでしたので、CDウォークマンにスピーカーを繋ぎ音楽を楽しみました。

今思うと、すごく楽しいクルマでした。

そして、車検が切れる半年前頃から、ネット経由の注文が入るようになります。

そろそろ買い替えか?なんて思っていた頃、この車を1万円で買いたいという人が現れお譲りしましたw

次に乗った車は「ホンダ アクティー660シルバー」 25万円。

引き続き手堅くいきますが、かなりのバージョンアップです!

この2台目のクルマを買った後、しばらくして半サバイバル生活を終え事務所を構える事になりました。

この半サバイバル生活が、その後の自分の人生に大きな指針を与えます。

私が現在、行っている自然体験活動や農業・アウトドアクッキング・炭焼き等の原点は間違いなくそこです。

少し変わったスタートでしたが、今もこうして事業を継続することができています。

貴重な経験をする環境を作り出してくれた父親に心から感謝します。

 

~父の言葉~

「お金を残してあげる事はできないけど、仕事をする基盤は残す」

有言実行だね(笑)